子宮筋腫

子宮筋腫Medical guide

子宮筋腫

子宮筋腫は子宮の筋肉から発生する良性の腫瘍です。
良性の腫瘍でそれ自体が生命を脅かすものではありませんが、放置しておきますと10kgを超えるような(双胎妊娠のお腹)腫瘤にまで発育することもあります。
また、急速に大きくなる筋腫、大きな筋腫については極まれに間葉系腫瘍、肉腫(悪性)が含まれていることがありMRIなどの精査が必要となります。
筋腫は女性ホルモンによって大きくなります。逆に閉経後には徐々に小さくなりますが消失することはありません。
複数個できることが多く、数や大きさはさまざまで手術で40-50個の摘出に及ぶ場合もあります。
筋腫の大きさや場所によって主たる症状が異なる傾向があり、大きく分けますと子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)の3タイプに分けられています。

症状

代表的な症状は①過多月経②月経痛③過多月経に伴う貧血です。
その他の症状としては月経以外の不正性器出血、腰痛、頻尿(トイレが近い)便秘等があります。症状は、できた場所によってまちまちですが、子宮の内側にできた筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。逆に子宮の外側にできた筋腫は相当大きくなっても症状がでません。若い人では不妊や流産の原因にもなります。

診断方法

小さな筋腫は見つけにくいこともありますが、外来での一般的な診察と超音波を使って診断します。
大きな筋腫や手術を考える場合にはMRI検査をすることもあります。大きな筋腫では約0.5%に悪性の子宮肉腫など含まれています。子宮肉腫と子宮筋腫を見分けることは難しく、摘出標本で判断しないと診断が確定ができない場合も少なくありません。

治療法

治療法 治療は筋腫が①発現した場所②症状③年齢④挙児希望によって異なってきます。
治療法には手術薬物療法があります。
手術では子宮全体を摘出する方法(子宮全摘術)と筋腫だけ取る手術(筋腫核出術)があります。根治性では子宮全摘出ですが、将来子供がほしい人や子宮を残す希望の強い人では筋腫だけ取る手術(筋腫核出術)を実施します。
筋腫だけ取る手術(筋腫核出術)の場合のデメリットは
① 手術の際、出血が多くなることがある②術後の腸管との癒着・ならびに腸閉塞③筋腫の再発です。
子宮筋腫は複数個できることが多く、直接見てもわからないような小さな筋腫は手術でも取り残すことになります。そのため数年後には取り残した筋腫がまた大きくなってくることもあります。
また、最近ではこれらの手術に腹腔鏡を使って行う施設も増えてきましたが、大きさやできた場所によっては難しいこともあります。

薬物治療では閉経状態にしてしまう治療(偽閉経療法:GnRH-A)が行われます。治療薬には毎日の点鼻薬(鼻からのスプレー剤)と4週間に1回の注射薬の2種類があります。
しかし、この治療では女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状がでたりする事、骨量が減少するリスクを踏まえて半年しか治療できません。
また、治療初期には不規則な出血を認めることもあります。治療は約60%の患者様に子宮筋腫が半分近くまで小さくなりますが、治療を中止すると元の大きさに戻ってしまいます。
よって、筋腫を小さくするために、手術前に一時的に使用するか、閉経に至るまでの一時的治療として用いることが多くなりました。
もう一つの治療法としてピル(経口避妊薬)があります。ピルは改良がなされ女性ホルモン量が少ないので、筋腫が大きくならず、症状も楽になる場合があります。
偽閉経療法と異なり更年期様の症状はありません。しかし、治療開始の年齢や筋腫の状態を鑑み治療目標をどこにおくかの検討を繰り返す必要があると考えます。

その他治療法

子宮を栄養する血管をつめてしまう治療法(子宮動脈塞栓術 UAE療法:自費)もあります。
治療が短期で済むこと、手術ではないことのメリットがあり米国では広く行われている治療です。
ただし、治療効果や筋腫縮小効果が不確実なことがあるほか、妊娠を予定される患者様にはお勧めできません。